「実家の片づけをしていたら、古いフロッピーディスクが大量に出てきた」
「自分で使っていたはずなのに、何に使っていたのかさっぱり思い出せない」
「大事なデータが入っているかも・・・と思うと安易に捨てられずに困っている」
当社では、このようなフロッピーディスクにまつわるご相談や、調査のご依頼が毎日多数寄せられています。
ご依頼いただいたフロッピーは当社で専用の機材で読ませて、何で作られていたかを判定し、データを取り出せるものは取り出して、お客様に納品するのですが、そこまでしなくとも「フロッピーの種類」「銘柄」「年代」「お客様の属性」といったヒントから、どのような用途で使われていたのかある程度予測することができます。
もし、皆様のご自宅の中からフロッピーディスクが発見された場合、是非以下のポイントを参考としてみてください。
フロッピーディスクの「種類」からわかること
一般家庭から出てくるフロッピーディスクは、ほぼ「3.5インチ」のフロッピーです。

固いプラスチックのカバーに覆われて金属、あるいはプラスチックでできたスライド式のシャッターがついているのが特徴です。
国内外で一般的に使用されていたフロッピーディスクは物理的に大きく分けて3種類のサイズがあります。

8インチ、5インチ、3.5インチとあり、「3.5インチ」という呼称は中に入っている磁気ディスクの直径が3.5インチ(1インチは約2.5センチなので、2.5×3.5=8.75センチの直径)だからです。標準サイズは磁気ディスクが直径8インチ(約20センチ)と巨大で、それよりも小さい5インチ(5.25インチ、約13センチ)のものがミニフロッピー、3.5インチがマイクロフロッピーと呼ばれています。
| 種類 | 呼称・略称 | 説明 |
|---|---|---|
| 8インチ | 標準フロッピー FD | 初期に登場した巨大なサイズ。家庭からはまず出てこない。ディスクの直径が8インチペラペラしたプラスチックのジャケットに覆われている。紙製のエンベロープ(封筒)に収めて保存する。 |
| 5インチ | ミニフロッピー MD | ディスクの直径は5.25インチ。8インチより小さいのでミニ。ペラペラしたプラスチックのジャケットに覆われている。紙製のエンベロープ(封筒)に収めて保存する。 |
| 3.5インチ | マイクロフロッピー MF | 最も普及したサイズ。ディスクの直径が3.5インチ。固いプラスチックに覆われている。 |
このシャッター部分をよく見ると「MF-2HD」や「MF-2DD」と刻印されています。

“2HD” “2DD”の部分ですが、”2″はディスクの表裏(2面)に書き込めるという意味です。”1”の片面しか書き込めないフロッピーも存在します。
“DD”はDouble Density=倍密度を意味し、”HD”はHigh Density=高密度を意味します。同じ大きさでも密度が高ければ保存できるデータ量は大きくなります。

このようにフロッピーの種類を正確につかむことが最初の重要な手がかりとなります。
MF-2DDなら、ほぼあの家電
フロッピーディスクのシャッターの刻印が「MF-2DD」と書かれていて、かつ一般家庭から出てきたものであれば、その用途は「日本語ワードプロセッサ(以後ワープロ専用機)」だった可能性が極めて高いです。
日本語ワードプロセッサ
ワープロ専用機は1980年代から2000年代初頭にかけて使われていたもので、最初期は事務用として数百万円もする高価なものでしたが、80年代中頃から小さな液晶ディスプレイを備えた家庭向けの製品が数万円程度で買えるようになり、一般家庭においても爆発的に普及しました。これらの家庭用のワープロ機はコストが安い2DDフロッピー専用のドライブを搭載していることが多くみられました。

もう一度シャッターの刻印に注目
フロッピーのシャッター周辺部分をもう一度注目してみると、「OASYS」「Rupo」「書院」などがプリントされているものがあります。これらは当時の代表的なワープロ機の機種名・愛称です。このような表示があるフロッピーはワープロ機で使われていたと判断して差し支えありません。

「KAOって、石鹸の花王?」と驚かれる方も多いと思いますが、花王は洗剤で培った界面活性剤の技術を応用しフロッピーディスクを製造販売していました。1998年に事業を撤退しています。
家庭用として普及していたワープロは次のメーカーとモデルです
| 愛称・ブランド | メーカー | 傾向 |
|---|---|---|
| Rupo(ルポ) | 東芝 | 家庭用、事務用どちらも多い |
| 書院 | シャープ | 家庭用が非常に多い |
| OASYS(オアシス) | 富士通 | プロユース(文筆家等)が多い |
| 文豪 | 日本電気(NEC) | ミニ5とJXは家庭が多い |
| Canoword(キャノワード) | キャノン | 後期(BJ以降)は家庭が多い |
| U1 / スララ | 松下電器(Panasonic) | 家庭が多い |
ワープロ機はメーカごとにフォーマットが違う
ワープロ機はフロッピーへのデータ書き込み形式(フォーマット)が各社それぞれ異なり、まっさらなフロッピーはそのままでは使えず、最初に必ず「初期化(フォーマット)」を行う必要がありました。
フォーマット操作は初心者の人にとってみると意味が分かりづらく、データが書き込めない、誤ってフォーマットしてしまった、というクレームが多発、フロッピーディスクメーカーはあらかじめ各機種ごとのフォーマット形式で初期化した「フォーマット済みフロッピー」を売り出すようになりました。


ワープロ機以外の可能性は?
ワープロ以外の可能性を考えると、パソコンが思い浮かびます。しかし、当時は家庭にパソコンはほとんど普及しておらず、当時主流であったNECのPC-9801系のパソコンは5インチフロッピーが主流で、割高な3.5インチで、かつ容量の少ない2DDを使う機会はあまりありませんでした。他に可能性があるとすれば「MSX」と「Macintosh」くらいでしょう。
但し、次のような例外もあります

- 家族に海外で生活していた人・研究者がいた場合
-
英語圏では事情が異なり、3.5インチ2DDはパソコンで多数使われていましたので、海外生活をされていた方や家族に研究者がいたという場合にはパソコン、または英文タイプライターの可能性もあります。
- 電子楽器
-
電子ピアノ、電子オルガン、エレクトーン、シンセサイザーなどの電子楽器の類で、自動演奏機能で使ったり、譜面のデータが打ち込まれたものの可能性があります。(当社では対応できません)
- 珍しいケース
-
珍しいものでは「ミシン」「編み機」で刺繍のデータが保存できるといったものがありました。(当社では対応できません)
MF-2HDは選択肢が多数ある
一方で、MF-2HDは様々な用途が考えられ、MF-2DDよりも想像は難しくなります。1990年代中頃になると、ワープロ機も進化し、2DD専用機が減り、大容量の2HDに対応した機種が増えました。
2HDでもフロッピーに刻印されているフォーマット種別が大きなヒントとなり、ワープロ用にフォーマットされているフロッピーはそのワープロ機種で使われていた可能性は高いです。
2HDでもワープロ用はある
2DDと同じように2HDでもワープロ用にフォーマットされていたフロッピーは多数あります。機種が記されているものはその機種で作成された可能性が高いです。

「DOS8」・「PC-98」の表記がある
次に考えられるのはパソコンです。

PC-9801では、2DDを使用することはあまりありませんでしたが、2HDは多数使われていました。また、ワープロ用と同じように「PC-98フォーマット済み」のフロッピーが売られていました。「PC-98」あるいは「DOS 8」という記載があるものはPC-98のMS-DOSで使われていた可能性が高いと思われます。PC-9801のMS-DOSで使われていた1.2MBフォーマットを意味します。
「1.44」「IBM」「DOS/V」「Windows」の表記がある
フォーマット済みフロッピーで「1.44」「IBM」「DOS/V」あるいは「Windows」と書かれているのはパソコンで使われていた可能性を示しています。

ここで注目したいのがメーカーのロゴです。Imationは3M社から1996年に分社化した会社です。すなわち1996年以降に製造された可能性が高い。となると、家庭にパソコンが普及しだしたのはWindows95以降に購入されたフロッピーであり、Windowsの可能性が高いと言えます。
ただし、フロッピーの歴史の末期(2000年前後)になると、市場にはWindowsフォーマット済みのフロッピーしか売られていないという状況となりました。ワープロで使いたいのにWindowsフォーマット済みしか売っていないので、ワープロで再初期化して使っていた、という現象も起こっていたので、文字通りWindowsで使っていたとは断定できないので注意が必要です。
「Macintosh」の表記がある
もちろんWindowsだけでなく、Macintoshでもフロッピーは使われていました。主に使われていたのは「OS9」時代までで、OSX以降はドライブも標準搭載されなくなり、ほとんど使われなくなりました。「Macintosh」と書かれていればMacで使われていた可能性が非常に高いです。
どんな内容が入っているのか
当社では基本的に「メディア変換サービス」としてお預かりしたフロッピーは、データを取り出すのみでその内容を閲覧することはありません。
しかし、遺品として残されたフロッピーから内容を取り出し、調査・整理を行う「遺品調査サービス」の実績でお調べしたデータの内容を元として、ワープロにはどのような内容が保存されているのかを当時の状況をひもときながら解説していきます。
圧倒的に多いのは年賀状
一般家庭において、ワープロの主な用途は「年賀状」です。インターネットや携帯のメールが普及する前は郵便での年賀状のやりとりを多く行っており、一般家庭でも数十枚から数百枚の年賀状を刷ったものです。大量の年賀状の宛名書きや、住所録保存用として使われることが多くみられました。年末年始の年賀状の時期しかワープロを使わなかったという家庭も多かったのではないでしょうか。
一族の系譜・家系図
他に多いのは家系や親族などの一族の系譜です。親族から聞き及んだ一族の歴史や家系をまとめておこうと思い立って作成されたデータが非常に多いです。せっかく高価なワープロを買ったものの、一般家庭では文書を作成する機会は多くなく、タイピングの練習がてら作成されたのだろうと想像します。
日記・自叙伝・家族へのメッセージ
また、日記、自叙伝も非常に多いです。生まれてから現在に至るまでの経歴を事細かに記録していた方もおられました。お子様が生まれた日の記録や名前の由来、今後生まれてくるであろう子孫へのメッセージ、遺書も多いです。
小さなフロッピーに保存しておけるので家族に見られることもなく、機種によっては機密語(パスワード)を設定できるので、内緒の文書を隠しておくのにうってつけでした。
そのため、財産関係、出自関係、異性関係、告白文などの大変センシティブな内容が記録されていることも少なくありません。
地域活動関係
他によくあるのは町内会、自治会の名簿や規約、回覧板の原稿、マンションの管理組合の書類、お寺や墓地、葬式の段取り、宗教の関係、PTA関係なども定番の内容です。
ずっと会の役員をされていた方が急に亡くなり、ご家族から「これまでのデータはすべてこの中に入っている」とフロッピーを渡されたというケースも多くあります。
まとめ
ここまで見てきたように、家庭から出てきたフロッピーディスクは「2DD」か「2HD」かという規格の違いだけで、当時の利用環境を高い確率で推測することができます。
- MF-2DD ほとんどが「日本語ワードプロセッサ(ワープロ)」で使われていたもの
- MF-2HD ワープロ後期のほか、パソコンの可能性も出てくる
小さなフロッピーにあなたのご家族が遺した大切な記録が残っているかもしれません。もしご自宅の片づけでこれらの媒体が見つかったら「中身を見てみたい」「捨てられずに困っている」と思ったタイミングでぜひご相談ください。

